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【特集】日本のスーパーフード!大森の老舗に聞く“海苔あれこれ”

日本の食卓に欠かせない「海苔」。実はたんぱく質やカルシウム、ビタミン群など多くの栄養素がバランス良く含まれているスーパーフードなのです。

そんな海苔ですが、実は大田区大森が海苔養殖発祥の地なのはご存知でしたか?

江戸時代の中頃から作り始められた大田区大森の海苔は、味・量ともに全国一を誇り、ここから全国へ海苔養殖・加工技術が伝えられました。しかし、港湾整備計画などの様々な理由から、昭和37年に漁業権放棄が決定し、昭和38年春、約300年にわたる大田区の海苔養殖の歴史は幕を閉じました。しかし、現在でも多くの海苔関連業者が残り、日本の海苔流通の要となっています。

そんな“大森の海苔”の歴史からアレンジレシピまでご紹介していきたいと思います。

 

※掲載している情報は公開日時点のものであり、変更となる可能性があります。お出かけの際は事前にご確認ください。

明治から続く「やきのり」の元祖【守半海苔店】に聞く
“大森の海苔の歴史”



まずは海苔のことをもっとよく知ろう!というわけで、明治34年よりこの地で海苔店を営む【守半海苔店】に伺ってきました。
この【守半海苔店】は「やきのり」を販売した元祖と言われている老舗。120年前から続く“大森の海苔”の伝統を今に伝えてくれるお店なのです。



お話を伺ったのは執行役員の守屋半慈郎さん。
「大森の海は海苔を養殖するのにとても適していたんです。流れの緩やかな広い多摩川の河口。その上流からは栄養分を含んだ淡水が流れ込んでいます。さらに東京湾に入って右回りに対流する親潮も、栄養分をたっぷり含んだまま大森付近を流れています。海水と淡水がゆるやかに交わり、加えて干満の差も大きく、海苔の漁場として最適な条件が揃っていたんですね。
昭和38年に海苔養殖の歴史は幕を閉じましたが、当店同様、今も多くの海苔関連業者が大森を拠点に日本全国の海苔を目利き、味利き、そして加工し、全国に販売しております。大森は海苔流通の大きな要なのです」



「私どもの場合、やはり“大森産の海苔”に愛着がありました。そこで大森産のものに近い海苔はないかと全国様々な産地のものを試しましたところ、九州の有明海がかつての大森の漁場と環境が似ていることがわかりました。特に佐賀県で採れるものがとても質がよかったので、現在では佐賀有明産の海苔のみを仕入れております」

では、産地から仕入れた海苔がどのように“食べて美味しい”海苔となるのか。続いては【守半海苔店】で工場長を務める佐藤高敏さんにお話を伺いました。

美味しいが詰まった【守半海苔店】の“元祖やきのり”そのこだわりを大公開!



先ほど守屋さんがおっしゃったように、【守半海苔店】で仕入れている海苔は佐賀県の有明海産のみ。しかもあるこだわりがあるのだそうです。
「海苔の養殖シーズンは11月に始まり、暖かくなる3月頃まで続きます。その間で数回刈り取りがあるのですが、当社では12月下旬から1月にかけて育った海苔のみを限定して仕入れています。なぜかと言いますと、この時期は水温が低く海の中の栄養源も豊富で、質の高い海苔が育つからなのです」(佐藤工場長)

ではその海苔を仕入れて販売すればいいのか、といえば当然そんなわけではありません。海苔を熟知した熟練の職人が適切な作業を施すことで味も風味も強い美味しい海苔に仕上げることができるのです。さっそくその行程を見てみましょう。



納品された状態の海苔は水分を多く含んでいるので、上の写真のように柔らかくて波打った状態。これをまずホイロと呼ばれる乾燥機にかけ、まっすぐに伸ばします。そうすることで長期保存が効く状態になります。


ホイロ(焙炉)と呼ばれる海苔の乾燥機。

ホイロの棚の一番下に電熱線が張ってあり、熱が下から上に上がっていきます。現在、多くの会社では数時間で乾燥できる機器を使用しているところもあるそうですが、【守半海苔店】では50年前から使用しているこのホイロで2日半かけて乾燥させます。じっくり水分を飛ばすことで風味豊かでしっかりした海苔となるのです。


左が乾燥前、右が乾燥後。

乾燥前の左の海苔はかなりクセが付いているのですが、乾燥後となる右はしっかり水分が抜けてまっすぐな海苔になっているのがわかります。
次の行程はいよいよ“焼き”です。



乾燥が終わった“ほしのり”を焼き機を使って「やきのり」にしていきます。



ベルトコンベアー型のこの焼き機で一枚ずつ丁寧に焼いていきます。
焼き時間は数秒程度なのですが、海苔はとっても繊細なので、少しでも焼く温度や時間が適切でないと美味しい「やきのり」にはならないとのこと。
この焼き機は焼く温度、ベルト速度を細かく設定することができるので、その日の天候や季節、作業場内の温度や湿度、そして海苔の状態を見ながら一定の品質に焼き上がるように細かく調整するのだそうです。これぞ職人芸ですね!



右が焼く前、左が焼いた後。こうして透かしてみると違いがよくわかりますね。焼く前は赤黒さが強く、いかにも海藻といった色が残っていますが、焼いた後は綺麗な緑色!
試食させていただきましたが、焼く前は海藻ならではの磯の感じがかなり強かったのに対し、焼いた後は香ばしい風味が加味され、旨味が感じられるようになっていました。

美味しい海苔の見分け方は「深い色と光沢」



ではここで佐藤工場長直伝!美味しい海苔の見分けるコツをお教えしましょう。

「焼いてある状態での『焼き色の美しさ』に注目しましょう。綺麗に焼き上がっているということは目の詰まり具合が均等で、栄養が豊富な状態で育った海苔の証拠です。黒くツヤのある海苔が最もいい海苔と言えます」

さらに味の好みによって、見分けるコツも教えていただきました。

「インパクトのある味がお好みであれば、表面が多少クスミがかっていて、表面に凹凸があり波をうっているのがおすすめ。塩分濃度が強く、味が強い傾向があります。
甘みのあるものがお好みの場合は、表面に細かい穴が開いているものが良いです。若芽でできた海苔は独特の甘みを感じられる海苔が多いですが、若芽は繊維が短いので穴が開いているように見えるのです」

【守半海苔店】オススメ!今ドキ海苔レシピ

和食のイメージがある海苔ですが、実は海苔ってどんな料理にも合わせやすい食材なんですよね。
【守半海苔店】がオススメするちょっと変わった海苔レシピをいくつか紹介しましょう!


こちらは【守半海苔店】で販売している海苔佃煮「ひしお煮(1瓶100g 756円税込)」と「やきのり」を使ったホットサンド。「ひしお煮」とマヨネーズを和えたものを食パンに塗ります。その上に「やきのり」とチーズを乗っけてお好みで3〜5分トーストするだけ!海苔とトーストって実はとっても合うんですよね。クセになること間違いなしのレシピです。



トマトのカプレーゼも海苔食材を使用することで一風変わったイタリアンに。オリーブオイルと「ひしお煮」を混ぜてモッツァレラチーズとトマトにかけるだけ!簡単にオシャレな海苔アレンジ料理の出来上がりです。



【守半海苔店】で実施している新型コロナウイルス感染症対策としては、店頭にアルコール消毒液を設置の他、店内の人数制限(2組まで)、従業員のマスク着用と手指の消毒を徹底しています。

長い歴史とこだわりを守る老舗【守半海苔店】。いつもの食卓に添えるも良し、少し手を加えて食べてみるも良し、もっと海苔を楽しんでみませんか?

守半海苔店
住所
大田区大森北1-29-3
電話番号
0120-62-4077
営業時間
平日10:00~19:00
土曜日10:00~18:00
祝日10:00~17:00
定休日
日曜日、年末年始
※その他、休日を設ける場合もあるため事前に電話での問い合わせ、もしくはHPでご確認下さい。
もっと海苔のことを知ることができる
【大森 海苔のふるさと館】



大森 海苔のふるさと館では、大森の海苔養殖の歴史などを知ることができます。
毎月、海苔つけ体験や伝統技術体験などの各種イベントも開催していますので、もっと海苔について知りたい方はぜひ大森 海苔のふるさと館へ!


大森 海苔のふるさと館
住所
 大田区平和の森公園2-2電話番号
 03-5471-0333開館時間
 9:00~17:00(1月〜5月 9月〜12月)
 9:00~19:00(6月〜8月)
入館料
 無料休館日
 第三月曜日(第三月曜日が祝日の場合は翌日休館)
 年末年始(12月29日〜1月3日)
 ※臨時休館あり
公式HP
https://www.norimuseum.com/

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