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【特集】大田区発 スタートアップを全力応援!創業支援施設「六郷BASE」


欧米と比較しても、起業の件数が少ないとされている日本。起業のアイデアを持っていても、実際に起業するにはクリアしなくてはならない壁があります。そこで近年、存在感を高めているのが、起業希望者や創業初期段階にある企業にさまざまな支援を行う「創業支援施設(インキュベーション施設)」です。


今回は、大田区が設置する創業支援施設「六郷BASE(ろくごうベース)」を訪問して、施設の概要や支援内容について取材をしました。

「六郷BASE」ってどんな施設?

「六郷BASE」とは、2021年10月にオープンした、大田区が開設・運営する唯一の創業支援施設です。会社の立ち上げに挑戦する「起業希望者」や「創業5年以内の起業家」「新規事業に挑戦する中小企業」を対象に、オフィスなどのワークスペースの提供やビジネスマッチングの機会など、起業や経営・事業の成長に必要なさまざまな支援を行っています。

3階建ての施設内には「オフィス」「シェアードオフィス」「コワーキングスペース」があり、いずれかの入居会員になることで「ミーティングルーム」や「カフェスペース」などの共用施設や設備を利用することが可能です。

一般の金額よりも低めの賃料が設定されているのも特長の一つ。事業が軌道に乗るまでの経済的な負担を大きく減らすことができます(入居期間は原則3年)。


3階にある「オフィス」。14㎡の広さの部屋が11室、22㎡の広さの部屋が1室あり、数人での作業などができます

2階にある「シェアードオフィス」。パーテーションで区切られたブース型の部屋で集中して作業が可能。約5㎡の広さのスペースが8ブースあります

2階にある「コワーキングスペース」。席を固定しないフリーアドレス型で、事業者同士の交流も生まれやすい空間です

打ち合わせなどに利用できる「ミーティングルーム」。2階と3階に、合わせて6部屋あります
1階には、「オープンスペース」や「セミナールーム」、3Dプリンターとレーザーカッターが置かれた「試作室」があり、入居者以外の方でも有料で使用することが可能です。


製品化前に機能等を確認する試作やノベルティなどのグッズ制作に利用されている「試作室」。
常駐するスタッフが機械の使用方法などを教えてくれます ※入居者も使用料が必要


グラフィックソフトやCADソフトで作成した加工データをもとにレーザー光線によって切断や彫刻ができる「レーザーカッター」(画像左)。木材、アクリル、皮革など、さまざまな素材に対応しています。3次元CADデータをもとに、樹脂素材で、立体的な造形物を作ることができる「3Dプリンター」(画像右)。製品の試作品などを、個人で安価で作ることが可能です

コミュニティマネージャーに聞きました!
「六郷BASE」でどんなことができるの?

創業間もない起業家にとって、経済的負担を抑えて事務所スペースや共用施設などを利用できることは、六郷BASEに入居する大きなメリットです。一方で、事業の立ち上げや経営に関するさまざまな支援・交流の機会を提供しているのも、この施設の大きな特長です。具体的にどのような支援が行われているのか、六郷BASEでコミュニティマネージャーを務める太田尚緒美さんにお話をうかがいました。


六郷BASEコミュニティマネージャー 太田尚緒美さん
――六郷BASEでは、起業家にどのような支援を実施しているのですか?
「コミュニティマネージャー」「インキュベーションマネージャー」と呼ばれるスタッフが連携しながら、入居企業の支援を行っています。

「コミュニティマネージャー」は、主に、入居企業と協働して実施するイベントや展示会の出展、交流会などの企画をすることで、事業の成長を後押しする役割を担っています。

「インキュベーションマネージャー」は、「パーソナルトレーナー」のような役割を担います。事業のゴール設定、課題の整理、ゴールまでのステップを確認し、成長を見守っています。

スタッフは、日々のコミュニケーションや月に1回実施している定期面談などを通じて、入居企業の事業の進捗状況、ニーズなどを把握できるように努め、ビジネスマッチングの機会創出に役立てています。入居できる期間は原則3年ですので、その期間中に、最大限に成長してもらうことを目指しています。


スタッフは、入居者と信頼関係を築き、効果的なサポートができるように心がけているそうです。
――どのような企業が入居しているのでしょうか?
テクノロジーやクリエイティブ、マーケティングなど、さまざまな領域の企業が入居しています。入居には審査があり、事業性などにプラスして、大田区で創業する意義や、地域貢献につながる事業であることも重視されます。大田区の強みである「ものづくり」に関連する企業が多いのも、特長のひとつかもしれません。

――入居者以外が起業について学んだり、「六郷BASE」について知ったりする機会はありますか?
月に数回、入居者以外の方も参加できる、起業や経営に役立つセミナーや相談会、先輩起業家によるトークイベントなどを実施しています。起業のアイデアをお持ちの人でも、「どのようなステップで準備を進めるのがよいのか」「どのような制度が利用できるのか」などの具体的な知識は不足していることも多いので、創業初期の企業の成長に必要なスキルやノウハウを学べる点が好評です。


起業に興味を持つ人を後押しできるよう、さまざまなイベントが企画されています
また、「試作室」や「オープンスペース」は、入居会員以外の方もご利用いただけます。起業家や起業を志す人たちのエネルギーに触れられる場所なので、起業に興味のある方は、ぜひご来館いただければと思います。

「六郷BASE」ってどんなところ?
入居企業にも聞きました!

実際に六郷BASEに入居している企業の代表の方にもお話をうかがいました。

2018年2月に株式会社ウエストヴィレッジを起業した西村仁志さん。六郷BASEのシェアードオフィスに入居しています。

主な事業内容は、衣類を中心に雑貨、食器、家電などのさまざまなアイテムを取り扱うリユースショップの運営です。古着の買い取りから販売までを一貫して行う店舗を5店舗、無人で古着を販売する店舗を2店舗、合計7店舗を経営しています(2024年3月現在)。


株式会社ウエストヴィレッジ 西村仁志さん
――起業のきっかけを教えてください。
私が起業した当時、大田区内には、古着の買い取りや販売をしているお店が少なく、不要になったけれども捨てるに捨てられない古着の処分に困っている人が多いのではないかという印象がありました。そこで、それまで勤めていた大手リユースショップチェーンで得たノウハウを活かし、地域の皆さまが普段よく利用する商店街の中に、衣料品を中心に、買い取りから再販売までを行うリユースショップを作ることに決めました。

ショップでは、持ち込まれた商品の中からまだまだ使えそうなものを選別して、地域社会の中で循環させています。価格帯は500~1,000円程度が中心です。販売できないものは、専門の業者を通じて海外に輸出してなるべくごみにならないようにしています。


1店舗目となった「ウエストヴィレッジ梅屋敷店」。順調に店舗数を伸ばし、現在では7店舗を経営しています

ウエストヴィレッジ店舗内の様子。衣料品を中心に、さまざまな商品が並んでいます
――六郷BASEに入居した理由は何ですか?
店舗数と従業員が順調に増え、事務処理などを行う専用スペースが必要だと感じていた時期に、六郷BASEがオープンすることを知って入居を決めました。それまでは店舗の一角で事務作業などを行っていましたが、集中できる環境ができてありがたく思っています。また、経営者として時に悩みを抱えることもありますが、そんなときに六郷BASEのスタッフに話を聞いていただけるのもありがたいですね。

――六郷BASEに入居したからこそ、実現できたことはありますか?
不要な洋服をリユースショップに持ち込むのは面倒だと感じる人のために、区内の商店街や住宅街に「ECO服BOX」というリサイクルボックスを設置しました。こちらに持ち込まれた服は、主に当社の無人店舗「いっぷくや」で再販売しています。

「ECO服BOX」の制作に、六郷BASEの試作室を利用しました。また、六郷BASEの紹介を通じて、「ECO服BOX」の最初の設置場所は水門通り商店街の一角を使わせていただき、順調にスタートさせることができました。※後に水門通り商店街に出店したため、現在は店舗内に移動しています。


無人で古着を販売している「いっぷくや」。無人販売によるローコストの運営で実現した300円均一の値付けも特長。売り上げの一部は大田区の社会福祉協議会に寄付をして、地域に還元しています
――六郷BASEに入居している他の企業の皆さんとは、どのような交流をしていますか?
六郷BASEのコワーキングスペースに入居している株式会社モノマネとは、マーケティングや戦略のアドバイスなどをいただく形で協業しています。株式会社モノマネは、主に家庭のモノを管理しフリマへ自動出品するアプリの運営をされている企業ですが、リユースやリサイクルを増やしたいという思いが一致して意気投合しました。私自身は、長期的な視野に立った戦略を練ることがあまり得意ではないので、お力添えをいただけて大変ありがたく思っています。

起業というとハードルが高い印象がありますが、六郷BASEでは、夏休みなどに親子を対象にしたイベントも実施しており、一般の方々にも門戸が開かれています。起業に興味のある方はもちろん、新しいビジネスのアイデアが形になる場所のエネルギーを感じるだけでも大きな刺激が得られるかもしれません。興味のある方は、ぜひ訪れてみてください。

大田区発の新たな価値を生み出す高架下開発
「梅森プラットフォーム」


大田区には、六郷BASEの他にも、新しいビジネスに挑戦する人々を応援する施設が存在します。

京急線の大森町駅から梅屋敷駅間までの高架下に、2019年4月に誕生した「梅森プラットフォーム」。ものづくりの技術に長けた町工場の立ち並ぶ周辺地域と、カルチャーやクリエイティブなどの新たな知性が交錯する拠点として、地域のものづくりをアップデートすることを目的に開発されました。

梅森プラットフォームには、「創業支援施設」「コワーキングスペース」としての役割を担う「KOCA」という施設があり、ハードウェアのスタートアップ企業、デザイナーなど、創業前から創業5年程度の事業者を中心に、多彩な企業が入居しています。

入居者同士や、入居者と地域の事業者がコラボレーションすることで、地域で培ってきたものづくりの技術を活かした新たなプロダクトが誕生するなど、ものづくりの未来に向けた新たな可能性を生み出しています。

大田区内にはまだまだ注目のスポットがたくさんあります。あなただけの「おおた推し」スポットを見つけてみてください!見つけたスポットは、ぜひSNSへ投稿を。その際は#uniqueotaをつけてくださいね!

大田区シティプロモーションサイトUniqueOtaでは、「他にはない、大田区ならではのユニークな場所と出会えるまち」を合言葉に、区内のさまざまな魅力を発信中です。

ぜひ、あなたの興味あるコンテンツを探してみてください。次回の特集もお楽しみに!
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