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【特集】私たちのごみはどこへ行くの?大田区のごみの行方を知ろう~毎日のごみ出しを意識して身近なSDGsへ~

私たちの暮らしから出たごみは、どこでどのように処理され、最終的にはどこへいくのでしょうか。知っていそうで実はよく知らないごみの行方を追います。

ごみの収集・運搬・資源回収は区の清掃事務所が担当

私たちの家庭から出たごみは、誰が処理しているか知っていますか?国?東京都?それとも大田区?実はごみの処理は、都と区と東京二十三区清掃一部事務組合の3つの分担制で行われています。
私たちが地域の集積所に出したごみは、各区が運営する清掃事務所が収集・運搬します。そのごみを焼却したり、破砕したりといった中間処理を行うのは、東京23区が共同で設置した特別地方公共団体である東京二十三区清掃一部事務組合(略称:清掃一組)が管理運営する清掃工場などの中間処理施設です。焼却や破砕など、必要な処理を施して最終的に残ったものは東京湾にある埋立処分場へ運ばれ、東京都に委託して最終処分しています。

大田区内には、2つの清掃事務所(蒲田清掃事務所、大森清掃事務所)と、2つの清掃工場(多摩川清掃工場、大田清掃工場)、そして京浜島不燃ごみ処理センターがあります。
今回は蒲田清掃事務所と多摩川清掃工場を訪ねました。

まず伺ったのは、大田区下丸子にある蒲田清掃事務所です。所長の岡本輝之さん、橋本彰係長、高橋正幸技能主任の3人が迎えてくれました。

「大田区には蒲田清掃事務所のほかに大森清掃事務所があり、両方合わせて280名ほどの作業員が、日曜と年末年始を除きほぼ毎日(土曜・祝日含む)勤務しています。運転手1名と作業員2~3名が1組となって1台の清掃車に乗り、集積所で回収したごみを、清掃工場や不燃・粗大ごみ中継所に運搬するのが清掃事務所の主な仕事です」(岡本所長)


可燃ごみの収集には小型プレス車を使用するなど、ごみの種類や目的ごとに車両を使い分ける
作業員の皆さんは朝7時40分までに出勤し、人員配置や道路状況の確認、運転手との打ち合わせを経て担当エリアに出発します。区内にあるごみ集積所は約31,000か所。昼休憩を挟んで午後も収集作業を行い、14時半頃に帰庫します。翌日の確認や日誌の記載を終えたら洗身(作業によって汚れた全身を洗い流すこと)し、16時25分に退庁。これが1日の仕事の流れです。


道幅や交通量によって交通の妨げにならないよう、迅速な作業が求められる
清掃事務所には、ごみの収集以外にどのような仕事があるのでしょうか?
「清掃事務所の仕事は、ごみの収集・運搬だけではありません。例えば、ごみの分け方、出し方の指導や、高齢者や障がいのある方でごみを所定集積所に出せない人への対応、防鳥(カラス被害防止)用ネットの貸し出し、曜日看板の設置も行います。時にはルール違反のごみに警告シールを貼ったり、排出した方を特定し、個別訪問して指導したりすることもあります。また、小学校・保育園での環境学習なども行います」(橋本係長)


保育園や小学校などに出張して行う環境学習。ゲームや紙芝居、ごみの積み込み体験などを行いながら、楽しくごみの分別などを学ぶ
区民のごみに関する相談や分別の指導をしたり、困っている人たちに寄り添ったり、あるいは探偵さながらにルールに違反したごみの出し方をされる方を特定し指導したり。まさに、ごみのオールラウンダーとして活躍されていることが分かります。

日々大変なお仕事をされている皆さんが少しでも作業しやすくなるために私たちができることを聞いてみました。

「まず、生ごみは水気をよく切ってください。そして、ごみ袋の空気をなるべく抜いて縛っていただくと、清掃車の中で破裂しにくくなります。水気の切っていないごみ袋が破裂すると、私たち作業員にかかるのはもちろん、道路を走る車や近隣の住宅の壁などを汚してしまいかねません。生ごみを出す際はひと手間かけていただけるとありがたいです。
また、竹串やつまようじなど、とがったものを出す場合は先端を折ってください。作業員の手に刺さったり、袋が破れたりすることがなくなります。他に困るのが、ごみ収集時間帯に集積所付近に駐車されること。二重駐車になって大変危険ですのでおやめください。このほか、清掃車にはごみをプレスする機械などが搭載されており大変危険です。作業中は近寄らないようご協力をお願いします」(高橋技能主任)

なるほど。ちょっとした注意を払うことで、衛生的に作業が進められたり、事故が防げたりするということですね。これからはごみを出すことに意識的になる必要があると痛感しました。

最後に、このお仕事をされる中でうれしいことや笑顔になれることを聞いてみました。
「地域の人々の喜ぶ顔を見たり、『ありがとう』『お疲れ様』のひと声をもらったりすると疲れが吹き飛びますね。保育園の園児さんたちが手を振ってくれるのを見ると、モチベーションが爆上がりします(笑)」(高橋技能主任)

私たちの暮らしと切っても切れないごみ。一人ひとりが想像力を働かせ、ごみについて意識することが、きれいな環境とエコな暮らしにつながることが分かりました。


「日々のごみ出しに気を付けることが一番身近なSDGsの入り口です。改めて意識を向け、ごみが最大限に生かされ、資源循環型社会への転換を推進することができます」と話す岡本所長(左)と、橋本係長(中央)、高橋技能主任(右)。


プラスチックを資源として回収します


大田区は可燃ごみとして扱っていたプラスチックを一部地域で資源として回収していましたが、2023年10月から、その地域を拡大するとともに、回収する曜日を新設して対応しています。
回収するのは、プラマークのついた食品の容器・ボトル・ラベルなどや、プラスチックだけでできているもの(容器や包材、おおむね30cm角以内のプラスチック製品など)。中身の見える透明あるいは半透明の袋に入れて出してください。
食品容器の場合は中身を全部出して軽く水ですすぎます。調味料など水ですすいでも汚れが落ちない場合は可燃ごみとして出しましょう。


集められた可燃ごみの焼却をする中間処理施設は清掃一組が担当

次に伺ったのは蒲田清掃事務所のお隣にある多摩川清掃工場です。清掃事務所が集めた可燃ごみが運ばれてくるこの工場は清掃一組が運営しており、可燃ごみを処理しています。ちなみに清掃工場では、個人見学会と団体見学会が随時開催されています。


明るく清潔な雰囲気の多摩川清掃工場。煙突の高さは100m

多摩川清掃工場の池上剛技術係長と、技術係の西岡隆志さんにお話を伺いながら、工場見学ルートを案内していただきました。

「集積所から収集した可燃ごみは清掃工場で焼却し、不燃ごみは不燃ごみ処理センター、粗大ごみは粗大ごみ破砕処理施設で破砕・選別して鉄やアルミとそのほかのものに分別します。これをごみの中間処理といい、私たち清掃一組が担当しています。
多摩川清掃工場は、大田区から出る年間120,000tのごみの約半分と他区などの可燃ごみ、約68,000tを1日150t燃やせる2つの炉で焼却しています」(池上技術係長)

多摩川清掃工場の特徴は、ごみ焼却炉に回転ストーカ炉を使用していること。回転ストーカ炉とは、円筒状のストーカ(ごみを燃やす箇所)全体が1時間に約1回転し、ごみを混ぜながら焼却する炉のことです。東京23区には清掃工場が22施設ありますが、回転ストーカ炉を使用しているのはこちらの多摩川清掃工場だけです!

多摩川清掃工場に運ばれてきたごみが、どのように処理されるのか順を追って見てみましょう。

1.ごみを乗せた清掃車は、入り口にある計量器に車ごと乗ってごみの重さを計ります。

2.収集車はプラットホームに進み、ごみをごみバンカ(ごみをいったんためておく所)に投入します。多摩川清掃工場のごみバンカは横幅40m、奥行き12m、高さ11mあります。

3.投入されたごみは、燃えやすくするためにごみクレーンでかき混ぜて均一にした後、ごみホッパという焼却炉の入り口から焼却炉に送られます。


幅3.8メートルのごみクレーン。4本の爪でごみをつかんでかき混ぜたり、運んだりする

4.焼却炉に運ばれたごみは800℃以上の高温で焼却し、容積を1/20に減らします。高温で焼却することでダイオキシン類の発生を防ぎます。


ごみバンカや焼却炉内の運転状況などをモニターする中央制御室。4班交代・24時間体制で監視している

ごみを燃やす過程で発生するさまざまな有害物質は、工場内に設置された公害防止設備で対策され、きれいな空気、きれいな水となって工場外へ排出されます。
また、ごみを燃やしたことで発生した熱は、発電して工場内で利用されるほか、余った電気は電気事業者に売却します。焼却した際に出る灰の一部は民間事業者に委託し、セメントの原料などに資源化し、利用されます。それ以外の灰は、東京湾にある埋立処分場に運ばれて埋め立てられます。

このように、埋立処分場に埋めるごみを少しでも減らすように努力していますが、東京湾の埋立処分場の残余年数は約50年(日本全体では約21年)と言われており、代わりになる埋立地を用意することもできません。最後の埋立処分場の寿命をできる限り長く延ばすためにも、ごみの減量やリサイクルに取り組む必要があります。
ごみ問題を考えることは、持続可能な社会を作るための必須事項です。国や都、区などに任せきりにせず、私たち一人ひとりが心掛け、ごみの減量に取り組んでいく必要があります。


「住んでいる区のごみがどのように処理されているのか、実際に清掃工場を見学し、体感してほしいですね」と語る池上技術係長(右)と、技術係の西岡さん(左)


清掃工場見学会を実施しています


多摩川清掃工場、大田清掃工場では、事前申し込み制による見学会を実施しています。
動画でごみの処理の概要を学んだあと、職員さんの説明で工場内を見学します。普段は目にすることができない清掃工場の内部を見て、ごみ問題について考えてみませんか? 申し込み・問い合わせは東京二十三区清掃一部事務組合へ。
HP:https://www.union.tokyo23-seisou.lg.jp/


見学コースには分かりやすい説明文がリサイクル品の現物などと展示されている


2023年に大田区は、SDGsの達成に向けて優れた取組みを提案する都市として、内閣府から「SDGs未来都市」に選定されました。さらに、その中で特に先導的な取組みを行う「自治体SDGsモデル事業」にも選定されています。

SDGsの達成ターゲットに「11.住み続けられるまちづくりを」という項目があります。一人ひとりが意識をしてごみの分別を行い、クリーンなまちづくりを心掛けることが、私たちが簡単にできるSDGsの取組み第一歩です。


大田区は、SDGs未来都市にふさわしい、持続可能な取組みを行っています。


今回の特集では大田区のごみの行方を追いかけてきましたが、いかがでしたか? 私たちが普段何げなく出している「ごみ」の先に、作業員さんたちの苦労や、中間処理施設でのごみ処理の工夫があることがよく分かりましたね。ごみを分別することは、資源の再利用につなげることのできる一番身近な心掛けです。これからは、ごみを出す際には意識的になると共に、機会を作って清掃工場を見学し、ごみについて考える時間を持ってみるのもよいですね。

大田区内にはまだまだ注目のスポットがたくさんあります。あなただけの「おおた推し」スポットを見つけてみてください! 見つけたスポットは、ぜひSNSへ投稿を。その際は#uniqueotaをつけてくださいね!

大田区シティプロモーションサイトUniqueOtaでは、「他にはない、大田区ならではのユニークな場所と出会えるまち」を合言葉に、区内のさまざまな魅力を発信中です。

ぜひ、あなたの興味あるコンテンツを探してみてください。次回の特集もお楽しみに!
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