最後に訪れたのは、「SALON,CAFE&BAR ToiToiToi(トイトイトイ)
❺」。ここは通常のカフェ&バーとしての営業だけではなく、学術や文芸、ベンチャー企業など、さまざまな分野の人々が集い、自由に意見を交換する場ともなっています。
代表の川口卓志さんにToiToiToiを立ち上げた背景、活動内容、大岡山のこれからなどについてお話をうかがいました。
川口卓志さん。ToiToiToiのほか、テクノロジー分野などの4つの会社を経営されています
___ToiToiToiの立ち上げの背景を教えてください。
大学では、研究者が、真に自分の好奇心に基づいた自由な探究を行うのが難しい状況があると感じています。私自身、東工大大学院時代にそのことを実感し、中世フランスで知識人や芸術家たちの交流の場として機能していたサロンをイメージし、大学内でサロン形式の研究発表会を始めました。
その後、活動のための場所が必要だと感じて始めたのが、2016年にオープンしたToiToiToiです。
普段は、カフェ&バーとして、おいしいお料理やドリンクを提供しています。店内はおしゃれで落ち着いた空間
___サロンで行っている活動には、どのようなものがあるのですか?
大学外の第三の研究発表の場として、自分の研究や学びを発表できる機会を提供しています。独学で勉強をしている研究者にとっては、自分の研究を体系的にまとめる良い機会となっていると思います。
月に1回程度開かれるサロン。「食事やお酒を楽しみながら対面で話せることで、より深い部分を共有できる気がします」と川口さん
研究者の支援として「投げ銭」の仕組みも導入し、企業や大学に所属していない在野の研究者たちが自分の探究を続けるプラットフォームとなることを目指しています。また、学生ベンチャーが会社を登記することもできたりします。
___地域の方にとっては、ToiToiToiはどのような存在ですか。
地域の方にとっては、地元に大学があっても、その内部に入るのはなかなか難しいことですよね。そこで、ToiToiToiが、地域と大学、スタートアップなどの企業がなじみあって、有機的なつながりをもてる場になれればと思っています。
ToiToiToiを普通のカフェ&バーとして利用してくださる方もたくさんいらっしゃいますし、月に1回は地域の子どもたちや住民が集まる子ども食堂も運営しています。東工大のボランティアグループの学生たちを中心に運営をしていて、食事を共にしたりゲームを楽しんだりしながら、交流を深めています。
ランチやディナータイムは、家族連れなど、たくさんの人でにぎわいます。写真は、ランチメニューの生パスタ「お肉ごろごろボロネーゼ(サラダ付き1,100円)」とデザートの「クレーム ド ブリュレ600円」
___東京科学大学の誕生は、大岡山のまちにどのような影響を与えるとお考えですか?
医療系の研究者や学生、そしてベンチャー企業がまちに集まることで、新たな広がりが生まれることを期待しています。
大学、企業、地域社会の3者が相互に連携し、技術革新や地域活性化を進めることが重要だと考えています。大学で生まれた研究成果をベンチャー企業が活用し、それを地域社会に実装することで、まちの魅力が向上します。さらに、それによって情熱をもった若者が大岡山のまちに集まってくる好循環を生み出すことが大切だと考えています。まちや大学、ベンチャー企業のつながりが少しずつ大きくなることで、情熱をもった若い人たちに「大岡山には、他のまちにはない何かがある」と感じてもらえるとよいですよね。ToiToiToiもそれを支える場でありたいと思います。
大田区はスタートアップの支援がとても充実していますので、元気な若者たちにどんどん集まってきてほしいと思います。
コロナ禍で来客が減った際は、一時的に閉店を余儀なくされたこともあったというToiToiToi。それでも多くの人の思いを背負ったこの場所を存続させたいという思いが川口さんにはありました。地域の活性化や新しいビジネスの創出など、ToiToiToiは人々のつながりと想いが実現する場です。今後のさらなる発展がとても楽しみですね。