先ほど守屋さんがおっしゃったように、【守半海苔店】で仕入れている海苔は佐賀県の有明海産のみ。しかもあるこだわりがあるのだそうです。
「海苔の養殖シーズンは11月に始まり、暖かくなる3月頃まで続きます。その間で数回刈り取りがあるのですが、当社では12月下旬から1月にかけて育った海苔のみを限定して仕入れています。なぜかと言いますと、この時期は水温が低く海の中の栄養源も豊富で、質の高い海苔が育つからなのです」(佐藤工場長)
ではその海苔を仕入れて販売すればいいのか、といえば当然そんなわけではありません。海苔を熟知した熟練の職人が適切な作業を施すことで味も風味も強い美味しい海苔に仕上げることができるのです。さっそくその行程を見てみましょう。
納品された状態の海苔は水分を多く含んでいるので、上の写真のように柔らかくて波打った状態。これをまずホイロと呼ばれる乾燥機にかけ、まっすぐに伸ばします。そうすることで長期保存が効く状態になります。
ホイロ(焙炉)と呼ばれる海苔の乾燥機。
ホイロの棚の一番下に電熱線が張ってあり、熱が下から上に上がっていきます。現在、多くの会社では数時間で乾燥できる機器を使用しているところもあるそうですが、【守半海苔店】では50年前から使用しているこのホイロで2日半かけて乾燥させます。じっくり水分を飛ばすことで風味豊かでしっかりした海苔となるのです。
左が乾燥前、右が乾燥後。
乾燥前の左の海苔はかなりクセが付いているのですが、乾燥後となる右はしっかり水分が抜けてまっすぐな海苔になっているのがわかります。
次の行程はいよいよ“焼き”です。
乾燥が終わった“ほしのり”を焼き機を使って「やきのり」にしていきます。
ベルトコンベアー型のこの焼き機で一枚ずつ丁寧に焼いていきます。
焼き時間は数秒程度なのですが、海苔はとっても繊細なので、少しでも焼く温度や時間が適切でないと美味しい「やきのり」にはならないとのこと。
この焼き機は焼く温度、ベルト速度を細かく設定することができるので、その日の天候や季節、作業場内の温度や湿度、そして海苔の状態を見ながら一定の品質に焼き上がるように細かく調整するのだそうです。これぞ職人芸ですね!
右が焼く前、左が焼いた後。こうして透かしてみると違いがよくわかりますね。焼く前は赤黒さが強く、いかにも海藻といった色が残っていますが、焼いた後は綺麗な緑色!
試食させていただきましたが、焼く前は海藻ならではの磯の感じがかなり強かったのに対し、焼いた後は香ばしい風味が加味され、旨味が感じられるようになっていました。