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【特集】大田区で文化・芸術さんぽ Vol.1 気軽に訪れたいギャラリー3選

大田区には、文化や芸術を楽しめるスポットが点在しています。今回の特集では、ふらりと立ち寄れる魅力的な場所をご紹介。忙しい日常を離れて、文化や芸術に触れる特別な時間を過ごしてみませんか?

倉庫跡地につくられた都内最大級アート施設

ART FACTORY 城南島

「ART FACTORY 城南島」は、湾岸地域の人工島・城南島にあるアート施設。もともと、株式会社東横インが利用していた約3000平米の倉庫を2014年にリノベーションして誕生しました。



この施設は、東横インが芸術・文化振興を目的とした社会貢献活動の一環として提供しているもの。東横イングループの株式会社ギャラリー1045が運営しています。

ニューヨーク・ブルックリンの倉庫街にあるアートスペースのようなレンガ貼りの外観も、わくわく感を呼び起こしてくれますね。

ユニークなアート体験が楽しめる


最初に訪れたのは、1階の大展示会場で開催されていた「POP-UP Exhibition」。取材時には、現代美術家・三島喜美代(1932-2024)氏の作品が展示されていました。

こちらに展示されているのは、一見すると、籠に入れられたただの空き缶。



しかし、実はこの空き缶、すべて陶器(セラミック)で作られた作品だというから驚きです。まるで本物のようなリアルな質感は、版画技法で陶器にプリントし、さらに手彩色を施すことで表現されているのだとか。



この作品も同じく陶器で作られています。見事に再現された段ボール箱は、まるで本物のよう。作品に触れることはできませんが、もし触れたなら、湿った段ボールの柔らかい感触が伝わってきそうな錯覚を覚えます。

新聞やダンボール、空き缶をモチーフにした革新的な作品で、世界的に評価されている三島氏。初めはコラージュなどの平面作品を手掛けていましたが、制作途中に「丸まった新聞紙」を目にしたことをきっかけに、このような立体作品を作り始めたそうです。


積みあがった新聞の束も陶器でできています
ごみや新聞紙をテーマにした作品が多いのは、ごみや情報に囲まれることへの不安を壊れやすい陶器という素材で表現することで、情報社会や環境問題へのメッセージを込めるようになったからだといいます。

その作風は、次第に巨大なインスタレーションへと進化。中でも、ポリエステルで新聞紙の束が積み上がる様子を表現したこちらの作品は圧巻です。



中は迷路になっており、分かれ道や行き止まりがあります。薄暗い空間が電球で照らされ、吸い込まれそうな不思議な雰囲気も。言うなれば、あふれる情報の迷路の中に迷い込んだような感覚でしょうか?

「POP-UP Exhibition」では、今後、三島氏に限らず、さまざまなアーティストの作品を紹介していく予定だそうです。新たな展示も楽しみですね!
※展示内容についての詳細は施設にお問い合わせください。

浮世絵を最新技術で細部まで拡大した
「Japanese Paper “Edo” Installation」



次に向かったのは、3階に常設展示されている 「Japanese Paper“Edo” Installation」。

ここでは、葛飾北斎、歌川広重、喜多川歌麿などの 江戸時代を代表する浮世絵師の作品 を、東京藝術大学COI(センターオブイノベーション)の高精細複製技術 「うつし」 によって和紙に拡大印刷したものが展示されています。拡大されているため、原画サイズでは見落としてしまうような細部まで、じっくりと鑑賞できるんです。

例えば、こちらは歌川広重の 「名所江戸百景 浅草田圃酉の町詣(複製)」。描かれているのは、吉原の遊郭の格子窓から外を眺めている猫の様子です。



もとのサイズ(複製)は、A4サイズよりも一回り大きいくらいの大きさですが、拡大し、タペストリーのような巨大な和紙に印刷したのが次の写真。



注目してほしいのは、窓の外に描かれているたくさんの人影。



実は、猫の視線の先には、神社の「酉の市」に向かう人々の賑わいが隠れていたんです。原画のサイズでは見過ごしてしまいそうなほどの繊細な描写に、当時の彫師の技術力の高さがうかがえますね。

さらにこちらは、歌川国安の「日本橋魚市繁栄図」を、等身大の人物の姿に拡大したものです。



江戸の市場で働く職人や、銭湯帰りの女性たち、武士など、江戸の町で生活する人々の姿が、より生き生きと浮かび上がります。



なかでも気になったのは、衣類をまとった可愛らしい犬が描かれていること(○で囲んだ部分に注目!)。



犬が大切にされていたことが、よく伝わってくるこの描写。ここに描かれている犬たちは、きっと魚市場のおこぼれもたくさんもらえたことでしょう。

こんな風に拡大して見ると、浮世絵の見え方がぐっと深まりますよね。「日本橋魚市繁栄図」の詳細は音声ガイドで楽しめますので、ぜひ現地で江戸時代の生活に思いを馳せてみてくださいね!

アーティストの制作や活動の支援も実施

「ART FACTORY 城南島」には、アーティストの創作活動を支援するため、制作スタジオや加工スタジオが設置されています。現在、約20組の画家や彫刻家などがここで活動しています。

アーティストにとって、制作場所の確保は大きな課題です。そのため、ここでは3年間の利用期限を設け、割安な価格でスペースを提供しています。

今回は特別に、スタジオ内を見学させていただきました。


ブースで区切られたス制作スタジオ(上)、立体作品を作るための加工スタジオ(下)
取材時は、入居アーティストである油絵画家・野中美里さんの企画展「いのちの色彩、つながる風景」を開催中でした。

風景の中で、色や形がつながり合い、溶け合うような幻想的な世界を表現されている野中さん。色使いもとても素敵で、一目見ただけで心が奪われてしまう、魅力的な作品が並んでいました。


取材時は公開制作も行われており、アートが生まれる瞬間のエネルギーを感じることができました
「ART FACTORY 城南島」では、入居アーティストの作品展も定期的に開催しています。アーティストたちの息遣いが感じられるこの場所で、創造のエネルギーあふれる作品をぜひご覧になってください。
ART FACTORY 城南島
住所
大田区城南島2-4-10
営業時間
11:00~17:00
定休日
年末年始・他不定休
入館料
無料

まだまだ楽しめる! 大田区内の文化や芸術

ゆったりとした時間を過ごしながら、文化や芸術に触れられる場所が、大田区にまだまだあります。

みぞえ画廊 東京店 田園調布ギャラリー ~和風住宅の中で、ゆっくりとアートを堪能



田園調布の閑静な住宅街に佇む、約400坪の敷地に広がる和風住宅。その趣ある建物をそのまま活かし、アートギャラリーとして開放しているのが「みぞえ画廊 東京店 田園調布ギャラリー」です。

この画廊を運営するみぞえグループは、建築や住宅の設計・施工を手掛ける企業。自社で設計した和風住宅を、10年ほど前から画廊として活用し、定期的に企画展を開催しています。

自然光に照らされた作品たちは、一般的なギャラリーとはひと味違った表情を見せてくれるはず。玄関、和室、書斎、リビングと、まるで生活の一部のように空間の中にアートが溶け込んでいます。

住宅街にあるため、近隣の方が散歩の途中にふらりと立ち寄ることも多いのだとか。静かで落ち着いた空間の中、ゆっくりとアートに浸る贅沢な時間を過ごしてみませんか?


※展示されている作品は、取材時のものです
みぞえ画廊 東京店 田園調布ギャラリー
住所
大田区田園調布3-19-16
営業時間
10:00~18:00
定休日
月・火曜(企画展開催中は無休)
入場無料

TEAL GREEN in Seed Village ~親子でほっとできる絵本の店



扉を開けると、目の前には温かみのある絵本の世界が広がります。こちらは、国内外の絵本や児童書を中心に扱う書店「TEAL GREEN in Seed Village」。店内には、約4000冊もの本が並びます。

ユニークなのは、平積みの本が一切ないこと。それは、売れ筋の本だけでなく、ロングセラーや知られざる名作にも出会ってほしいという思いから。こどもはもちろん、大人も童心に帰って本との出会いや発見を楽しめる、わくわくするような空間です。

このお店を営むのは、4人のお子さんを育てながら絵本の魅力に惹かれ、先代のオーナーからお店を引き継いだ種村由美子さん。「子育て中の若い親御さんが、お子さんと一緒にほっとできる場所」を目指し、絵本の原画展やお話の会、工作のワークショップなども開催しています。

さらに、店の奥には10席の座席があるティールームも併設。中庭を眺めながら、紅茶やコーヒー、クッキーなどの焼き菓子をいただけます。

こども連れの方はもちろん、プレゼント選びや自分のための1冊を探している方にもぴったりのスポットですよ。

TEAL GREEN in Seed Village
住所
大田区千鳥2−30−1
営業時間
11:00~18:00
定休日
月・火・水曜
日常の中で出会える大田区の文化と芸術。次の休日は、そんな豊かな時間を過ごせる場所に立ち寄ってみてはいかがでしょうか?

▶▶区内のギャラリーやアトリエなどアート情報を探してみたい方は大田区文化芸術情報紙
「ART bee HIVE」をご覧ください。
https://www.ota-bunka.or.jp/information_paper/art_bee_hive

▶▶福祉施設とアーティストをつなぐプラサート(+ART)プロジェクトについての記事はこちら
https://unique-ota.city.ota.tokyo.jp/charm/life/pickup-202311-01/

大田区内にはまだまだ注目のスポットがたくさんあります。あなただけの「おおた推し」スポットを見つけてみてください!見つけたスポットは、ぜひSNSへ投稿を。その際は#uniqueotaをつけてくださいね!

大田区シティプロモーションサイト「UniqueOta/ユニークおおた」では、「他にはない、大田区ならではのユニークな場所と出会えるまち」を合言葉に、区内のさまざまな魅力を発信中です。

ぜひ、あなたの興味あるコンテンツを探してみてください。次回の特集もお楽しみに!
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