大田区は、都内で最多の銭湯数を誇ります。
体を癒す場だけでなく、地域の方々との交流の場としても親しまれている銭湯。
今回はそんな魅力的な銭湯を特集します。
まずは大田浴場連合会の事務局長であり、現存している大田区の銭湯の中でも老舗の改正湯のご主人、小林千加史さんに大田区の銭湯についてお話を伺いました。
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「私たち大田浴場連合会は“銭湯特区”という言葉のもとに銭湯業界を活性化させるべく活動しています。
今、大田区に残っている銭湯は戦中戦後から商いを始めたところがほとんどです。私どもの“改正湯”は私で四代目。初代は昭和4年に大田区で銭湯を始めました。最盛期は昭和30〜40年代。町工場が多いエリアということもあり、蒲田だけでも100に迫るほどの銭湯があったそうです。
今では東京だけでなく、日本全体で銭湯は少なくなっていく一方です。それでも我々大田区は都内で最多を保っています。」
ー大田区に銭湯が数多く残っているのはどうしてでしょう?
「高齢者たちにとっての憩いの場のほか、周辺にお風呂のない住居がまだ残っていることや“大田区温泉郷”といった言葉もあるほど、温泉を使った銭湯が多いことが挙げられます。あとはレジャー施設としての需要といいますか。これはニーズがあるというよりは、ニーズを作り出すという方向ですが、近年私たちが力を入れている部分でもありますね。」
ー力を入れている部分というのは?
「最近は銭湯を知らない子供が多いんです。そこで第一日曜日は小学生以下を無料にしてみたり、保育園で銭湯を題材にした紙芝居イベントなども試みています。
2013年頃からは、お隣の川崎市の浴場組合と毎年コラボイベントを実施しておりまして、今年はちょうど12月からスタンプラリーイベントを開催します。これは京急電鉄さんにもご協力いただいて、注目度も急上昇中(笑)。これを機に、普段銭湯にご縁のない方にも、ぜひ来ていただけたらうれしいです。」
※「京急にのって湯こう!大田・川崎 銭湯スタンプラリー」は2022年2月13日(日)で終了いたしました。
ーこうした様々な取り組みを通して“楽しめる”銭湯のイメージを作りあげているわけですね。
「そうです。大田区の銭湯は一味も二味も違う、というのをこれからも形にしていきたいですね。東京23区、ひいては日本全国の中でも一歩二歩先を走る、銭湯業界をリードできる大田区でありたい、と思っています。やはり首都圏で、公共浴場の温泉施設がこれだけあるエリアは珍しいですし、間違いなく大田区の銭湯には活気があります。その活気で全国の銭湯業界を巻き込んでいけたら最高ですね。」
ーなぜ活気があるのでしょう?
「街そのものに活気があるからではないでしょうか。大田区は商店街の数でも都内最多ですし、そういった意味で地元密着型の充実した生活を住民の方々が送られているんだな、というのを肌で感じています。その輪の中に確実に“銭湯”という施設が根強く存在しているんですね。
お客様から“ありがとう、気持ちよかったよ”と心の底から感謝される商売ってなかなかないですよ。これからも皆様にもっと喜んでいただけるよう、がんばっていきたいですね。」
大田区の銭湯について色々とお話を伺うことができました。
さて、大田区などの臨海部周辺には、淡褐色や黒褐色の「黒湯」と呼ばれる温泉が広く分布し、古くから大田区内の銭湯で利用されています。
具体的にはどのような銭湯があるのか、いくつかのぞいてみましょう。