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龍子記念館で名作展「時局と画家ー川端龍子の1930~40年代」を開催

戦後80年を迎える今年、戦争の時代を生きた川端龍子の作品を展示

―戦争に捷(か)った暁にさて芸術が無いとあっては淋しいものでしょう―

上の一節は、太平洋戦争の破局的な状況下、1945(昭和20)年6 月に画室で展覧会を開催することを決意した日本画家・川端龍子(1885-1966)が案内状に書いたものです。その後、終戦間際の8月13日に龍子は自宅を空襲で失うものの、わずか2ケ月後の10 月には展覧会を開き、焼け跡から始まる戦後日本を弱りきった龍に表現した《臥龍》(1945年)を発表しました。

《臥龍》1945年、大田区立龍子記念館蔵

 

本展では、龍子が自身で設立した美術団体・青龍社の展覧会で発表した作品を中心に紹介します。対日感情の悪化と、昭和恐慌に陥り「非常時」と呼ばれた1930 年代の作品からは、大画面の連作に取り組んだ《波切不動》(1934年)、《椰子の篝火》(1935年)、《源義経(ジンギスカン)》(1938年)等を展示します。太平洋戦争開戦後、1940 年代の作品からは、海軍大将・山本五十六が戦死した年に描いた《越後(山本五十六元帥像)》(1943年)、悪化する戦局への怒りや悲しみを表した《怒る富士》(1944年)、《水雷神》(1944年)等を展示し、画家として龍子が表した戦争への姿勢から、戦争の時代と画家について考えます。

 

従軍し現地を取材

龍子は軍の嘱託画家として戦地へ赴き、実際に現場で何が起きているのかを自身の目で確かめます。その体験を踏まえ制作された作品は、戦闘場面のような直接的な戦争の記録ではないモチーフを取り上げています。

 

《源義経(ジンギスカン)》を描いた1938年、龍子は中国北部から内モンゴルを訪れ、モンゴル高原を一望しました。源義経がモンゴル帝国の初代皇帝チンギスハンであるという伝説を取り上げながら、日中戦争下の当時、日本が満州、そして内モンゴルへと影響力を強めていた時期を示唆的に表現しています。

《源義経(ジンギスカン)》1938年、大田区立龍子記念館蔵

また、日本統治領であったサイパン、パラオ、ヤップの島々を視察した際には、原始的生活の面影を残す場所に魅了されました。《椰子の篝火(かがりび)》は、踊りを楽しむ島民の様子を白描画の技法を用いた構成で描き、色彩を抑えた線による表現が試されました。

(左)《椰子の篝火》1935年、大田区立龍子記念館蔵

 

新収蔵作品を本展にて初公開

龍子のほか、藤田嗣治、猪熊弦一郎ら14名が南方戦線に従軍した際、世話役の陸軍将校へ贈った寄せ書きや、唐辛子を墨で描いた珍しい作品、龍子が昭和初期に制作した薔薇をモチーフとした作品などを展示します。こちらも併せてご覧ください。

 

 

 

メインビジュアルの《越後(山本五十六帥像》(1943年、大田区立龍子記念館蔵)は、長岡出身の海軍将校・山本五十六を大画面に描き、人物によって越後国を象徴的に表現しています。

 

戦後80年、画家が生きた1930~40年代についてあらためて考える企画です。

 

会期
2025年7月12日(土)~9月21日(日)
開館時間
9:00~16:30(入館は16:00まで)
休館日
月曜日(祝日の場合は開館し、その翌日に休館)
入館料
一般:200円  中学生以下:100円 ※65歳以上(要証明)、未就学児及び障がい者手帳等をお持ちの方とその介護者1名は無料
龍子公園のご案内
10:00、11:00、14:00 ※上記のお時間に開門し、解説を聞きながらご見学いただけます(30分程)。 時間外は閉門しております。
ギャラリートーク開催日
8月24日(日)、9月21日(日) 各日13:00から40分程度 直接会場へお集まりください