「ものづくりのまち」大田区は、中小製造業が集積しており、多くの若手人材が、日々ものづくりの現場で奮闘しています。
本インタビューでは、そんなみなさんの具体的な仕事内容や職場環境、日々感じていることなど、生の声をご紹介します。
ものづくりの世界で、それぞれのチャレンジを始めた“ルーキー”の皆さんから、リアルなお話をお聞きすることで、大田区のものづくりを身近に感じていただければと思います。
Vol.3 奥村 秋俊 さん (株式会社 北嶋絞製作所)
●この会社に入社した経緯は?
多摩美術大学を卒業して、新卒で入社しました。来年の4月で丸3年になります。
大学では、美術学部工芸学科金属専攻だったのですが、教授の一人がヘラ絞り*1の技術に長けていたことが、ヘラ絞りを知ったきっかけです。
大学の卒業制作も、ヘラ絞りの技術を使った作品だったのですが、ヘラ絞りをやっていたのは、同専攻20名のうち、1名だけでした。
なんか、シンメトリー(左右対称)の形が好きなんですよね(笑)
*1ヘラ絞りの様子
回転する金属にへらを押しあてて変形させながら製品を目的の形にしていく加工方法。
美大では、1/3が大学院に進み、1/3が作家などの夢を追いかけます。
私は就職しようと思ったのですが、就職先を考えたときに、せっかくなのでヘラ絞りに関することはどうだろうか?と思って、WEBで検索してみたところ、トップに出てきたのが北嶋絞製作所でした。
大学では、小さいものしか制作できませんでしたが、最初に、北嶋絞のヘラ絞りを見たときに、その大きさとキレイさに感動しました。そして、圧倒的に作るのが速いですね。
●現在、どんなお仕事をしているのでしょうか?
実は、ヘラ絞りはまだやっていません(笑)
入社当初から行っている汎用旋盤などに加えて、最近では会社が新しいNC旋盤*2と5軸のマシニングセンタ*3を導入したので、その担当もしています。
ヘラ絞りと他の加工を一貫してできるようにするためなのですが、新しい機械なので、社内に扱える人がいないため、先輩と一緒に試行錯誤しながら動かしています。
3D CADで図面を起こし、CAMでツールパスを生成します。それをコードに変換し機械を操作するのですが、3D CAD/CAMは会社に入ってから学びました。
3D CAD/CAMは未経験の人でもできると思いますよ。要するにパソコン操作ですから。
自分もまだまだ勉強中ですけれど。
多品種少量生産なので、都度、金型を作成して製造します。常に新しいものに取り組んでいる感じですので、飽きがこないですね。それで言うと、DX戦略策定プロジェクトのチームメンバーにも入っていて、会社のDX戦略の策定もしています。
*2NC旋盤:NCとは「Numerical Control(数値制御)」の略。機械の動作を指令するNCプログラムによって、刃物や工作物の位置を正確に動かしながら加工を行う。
*3マシニングセンタ:回転工具を使用して、複数の切削加工を1台で行える工作機械。
●職場の雰囲気はどうでしょうか?
人間関係はいいですよ。年齢層は、私よりも年下が1名で、あとは年上です。
職人気質の方が多いので、当たってこい!といった感じです(笑)。物怖じしないで聞くと、いろいろと教えてくれます。
個性的な方が多いかもしれませんね。新しいものが好きで、どんどんやる人も多いです。
●職場選びで重要なことは何でしょうか?
職場選びで大事なところは、やっぱり給与と休みやすさですかね(笑)
北嶋絞は、なんと残業がゼロなんです。私が残業したのも、2年間に2回だけです。それも、外部の方の都合に合わせただけでした。
なんで残業ゼロにできるんでしょうね。
社長が、もともと製造を担当していたので、作業工程や納期などのことをよくわかっているからかもしれません。
また、当社でしかできない仕事が多いということもあります。
大きなもの、レアメタルなどの難しい素材の加工、深絞りといった特殊な形状など、日本中でも他にできる企業がないので、融通が利くのかもしれません。
以前は、プライベートな時間で革製品の制作などをしていたのですが、今はやらなくなりました。仕事でものづくりをしているので、制作したいという欲求が満たされているみたいです(笑)
将来的には北嶋絞で学んだ技術を用いて、また作品制作をやりたいと考えています。
まだ構想段階ですが。
左:3DCADでの図面作成 右:マシニングセンタの操作
※大田区の町工場を一斉公開するイベント「おおたオープンファクトリー」が、今年は11月30日(土)に大田区全域で開催されます。北嶋絞製作所も出展します。ぜひおでかけください。
おおたオープンファクトリー
株式会社北嶋絞製作所
本社:東京都京浜島2丁目3番10号
創立:昭和22年11月1日
事業概要:各種金属板塑性加工全般ヘラ絞り・プレス絞り・特殊形状絞りこれ等に付属する加工並に板金加工
問い合わせ先
産業振興課(工業担当)
電話:03-5744-1376
FAX:03-6424-8233
大田区のものづくりに関する過去の記事
新連載・大田ものづくりROOKIES Vol.1
https://unique-ota.city.ota.tokyo.jp/news/rookies-vol-%ef%bc%91/
新連載・大田ものづくりROOKIES Vol.2
https://unique-ota.city.ota.tokyo.jp/news/rookies-vol-%ef%bc%92/
大田区のものづくりについては
https://unique-ota.city.ota.tokyo.jp/charm/industry/craftsmanship/
創造力に溢れたものづくりについては
https://unique-ota.city.ota.tokyo.jp/charm/industry/pickup-202004-01/
産業のまち発見隊レポートは
https://unique-ota.city.ota.tokyo.jp/news/sangyounomachihakkentai_202308/
https://unique-ota.city.ota.tokyo.jp/news/sangyounomachihakkentai_20240820/