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【特集】渋沢栄一が描いた理想のまち 田園調布を歩く


20年ぶりに紙幣デザインが変更されました。新壱万円札の肖像は実業家の渋沢栄一です。今回は、渋沢栄一にゆかりのある田園調布を散策します。

渋沢栄一と田園都市構想

今回、渋沢栄一と田園調布について、大田区立郷土博物館の学芸員、築地貴久さんにお話を伺いました。


近代日本経済の父、渋沢栄一(国立国会図書館「近代日本人の肖像」)
「慶応3(1867)年開催のパリ万博に、使節団の一員として27歳で渡欧した渋沢栄一は、徳川慶喜の弟で使節団の団長だった徳川昭武の留学にも随行し、ヨーロッパで見聞を広めました。渋沢が大きく刺激を受けたのは主に4つ。“株式会社”“出版・製紙業”“交通・鉄道”そして“まちなみ”です。明治の新政府で渋沢が新しい国づくりに尽力し、実業界入りして以降は近代的洋紙製造会社の設立や多くの株式会社を立ち上げたのはご存じの通り。そして数えで77歳の時、経営の第一線から退き、以降は社会事業や公共事業に専念しました」(築地さん)


昭和27(1952)年頃の田園調布。同心円放射状に広がるまちなみがよく分かります
「引退後の渋沢は、いよいよまちづくりに乗り出します。当時の日本は、店舗の上が住居といった職住近接が当たり前。しかし工業化が進めば、都市部の住環境は悪化することに。仕事と暮らしの場を切り離し、人々は都市で働き、郊外の緑豊かな地に住む――これがイギリスで提唱されたGarden City(田園都市)構想と結び付いたのです。渋沢は、健康で安全に暮らせる理想のまちづくりのために、田園都市株式会社の筆頭発起人となりました。同社が住宅地開発したのが田園調布です」(築地さん)


駅の地下化に伴い一度は解体された田園調布駅の駅舎は平成12(2000)年に復元されました
まずは田園調布駅の旧駅舎へ。旧駅舎を中心に同心円と放射状に広がるまちなみは、パリのエトワール凱旋門とその周辺がモデルといわれています。

緑まぶしい宝来公園~多摩川台公園


春には新緑、秋には黄金色に。イチョウ並木がまちを彩ります
田園都市構想に欠かせないのが、住環境となじむ豊かな自然。駅前のイチョウ並木を南西へ進むと、梅林や椿林などがある宝来公園に到着です。


宝来公園には約70種、1,500本の花や樹木があります
宝来公園を出てさらに南西へ。多摩川台公園が見えてきました。多摩川台は田園調布の旧地名です。こちらの公園も豊かな自然の宝庫。カメラを構えバードウォッチングをしながら木々を見上げている方もいました。


道路をまたぐ「虹橋」。右のあずまやは多摩川台公園の造成に尽力した下村宏の雅号にちなんで「海南亭」という名が付いています
高台から見下ろす多摩川の雄大な姿は必見。昭和59(1984)年に選定された「多摩川八景」の1つにも名を連ねています。


多摩川八景は、建設省関東地方建設局(現国土交通省)が主催しました
古来、多摩川の豊富な水資源に恵まれた肥沃な土地だったこの付近は、古墳の宝庫。国の史跡に指定される前方後円墳の亀甲山古墳を始め、古墳が8基連なる多摩川台古墳群もあります。

古墳時代にタイムスリップ!


古墳展示室には横穴式石室をイメージした展示コーナーが
公園内の古墳展示室も必訪スポット。古墳専門の展示施設で、古墳の作り方の解説や出土した埴輪(はにわ)から当時の装束を再現した人形の展示など、コンパクトながら充実の展示が並びます。


古墳展示室は公園管理事務所に併設。古墳の土の盛り方がイメージできるよう断面が模式的に再現されていたり、世界の遺跡と古墳の大きさを比較できたりするなど、楽しく学べます
縦に長い多摩川台公園を南下すると、水生植物園、四季の植物園、あじさい園など、自然の美しさを堪能できるスポットが次々と現われます。取材当日も撮影をする人、写生をする人と思い思いに自然に親しむ皆さんと出会いました。


(左)7種類約3,000株が植えられたあじさい園 (右)水生植物園は多摩川の水を浄化していた旧調布浄水場跡地です

田園調布の老舗・大黒堂へ



ここで小休止。地元で長年愛されている銘菓・鮎やきを買いに行きましょう。昭和4年(1929)年創業の大黒堂は東銀座の歌舞伎座で、人形焼きの実演販売も行う名店です。


(左)鮎やきは一尾150円。人形焼きや歌舞伎狂言煎餅(瓦せんべい)の販売もあります (右)ソフトクリームに鮎やきが入った鮎やきソフト500円も人気 ※値段表示は税込で、取材当時の情報です。
「多摩川では昔から鮎がとれました。でも釣れない日もありますよね。鮎やきは、そんな日に買って帰れる鮎のお菓子として初代が考案しました。創業時から受け継ぐ焼き型に、丁寧にさじで生地を流し、職人が炊いた“こしあん”を尻尾まで詰めて焼き上げます」(大黒由紀さん)


タイミングがあえば店頭で焼いている様子を見学できます


創業時のお店と駅前の商店街。店頭での鮎やきは今も健在です
創業95年。家族3代の思い出の味というお客さまも多くいらっしゃいます。令和2(2020)年にお店をリニューアルした時には、お客さまから改装前のお店を描いた色鉛筆画が寄贈されました。「お客さまのおかげで今があります」と笑顔で大黒さんは嬉しそうに話してくれました。


お店の前で、お客さまから頂いた額を持つ大黒由紀さんとスタッフの村石さん
大黒堂
住所
東京都大田区田園調布一丁目55-5
(東急多摩川線「多摩川駅」徒歩1分)
営業時間
11:00~17:30
定休日
水曜日
※令和6(2024)年7~8月は水・木定休

田園調布せせらぎ公園・せせらぎ館でくつろぐ


令和3 (2021)年に開館。令和6(2024)年11月17日には体育施設もオープン予定
次は本日のゴール、せせらぎ公園です。ここにはかつて遊園地の多摩川園がありました。地域活動及び文化活動の促進や地域力の向上、公園の休憩スペースとして建てられたせせらぎ館は、世界的な建築家の隈研吾氏が設計を担当し、館内から水と緑あふれる公園の自然を感じられるのが魅力です。


せせらぎ館内には図書サービスコーナーや予約制で利用できる多目的室や集会室などがあります
お隣にあるレストランfu-haku(ふはく)は、令和6(2024)年4月にオープンしたばかり。朝8時半の開店から、利用客がひっきりなしです。


(左)一番人気!季節によって内容が変わる fu-hakuプレートは1,000円~ (右)食べごたえ抜群!野菜たっぷりのfu-hakuカレー800円(写真は特盛+350円)に多摩川とんかつ600円をトッピング
※値段表示は税込で、取材当時の情報です。
レストラン fu-haku(ふはく)
住所
東京都大田区田園調布一丁目53-12
田園調布せせらぎ公園内
定休日
年末年始(12月29日から1月3日まで)
毎月第2木曜日(祝日の場合は翌日)
最後に築地学芸員に、田園調布の魅力について語っていただきました。
「田園都市構想を推進したのは渋沢栄一であっても、まちの美しさや魅力はそれを守ろうとする住民の皆さんの努力と、このまちを愛する精神によって保たれているのではないでしょうか」


大田区立郷土博物館の学芸員の築地貴久さん

多摩川園とは?



多摩川園は大正14(1925)年~昭和54(1979)年に存在していた遊園地。田園都市構想における地域居住者の娯楽施設として開園しました。田園都市株式会社は、関西で鉄道と住宅の造成に成功していた、阪急電鉄をモデルにしました。多摩川園も宝塚新温泉を真似たので少女歌劇団が結成され、大浴場などもありました。


(左上)大田区立郷土博物館提供 (それ以外)大田区立郷土博物館提供、石原裕之氏撮影
周辺の住宅地化や他のテーマパークの興隆など、時代の流れに押されて昭和54(1979)年に閉園しました。


大きな滑り台のアトラクション「大山すべり」は、せせらぎ公園の「大山坂」になっています

田園調布特集はいかがでしたか? 大田区の歴史に触れる、自然の中でリラックスするなど、多彩な時間が過ごせるエリアでしたね。

大田区内にはまだまだ注目のスポットがたくさんあります。あなただけの「おおた推し」スポットを見つけてみてください!見つけたスポットは、ぜひSNSへ投稿を。その際は#uniqueotaをつけてくださいね!

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ぜひ、あなたの興味あるコンテンツを探してみてください。次回の特集もお楽しみに!
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