産業羽田エリア

【特集】羽田イノベーションシティ「PiO PARK」発 ものづくりのまち大田から“ともにイノベーションを”


羽田空港第3ターミナル駅から1駅1分。天空橋駅に直結し、先端産業と文化産業をコアに「公民連携で新しい産業を創造・発信する」というコンセプトのもと、日々進化し続ける羽田イノベーションシティ。大田区が設置したZONE Kの「HANEDA×PiO」は、さまざまな人が出会い、交流することにより新しい価値やイノベーションを生み出す場です。施設内の交流空間PiO PARK(ピオパーク)で、チャレンジを続ける皆さんにお話を伺いました。

日本のゲートウェイ・羽田で、PiO PARKがめざす
イノベーション発信

PiO PARK


ZONE Kの2階にあるPiO PARK。開放的で明るい印象のスペースです
「HANEDA×PiO」は、企業や団体が入居するテナントゾーンと、交流空間ゾーンPiO PARKで構成されています。まずは、羽田イノベーションシティ担当の大田区産業経済部の藤内悠輔さんと、PiO PARKを管理運営する公益財団法人大田区産業振興協会の松居大樹さんにお話を伺いました。

――PiO PARKは大田区内の企業をはじめとして、「国内外の企業、大学・研究機関、団体、起業家・スタートアップなど、多様な人々の産業交流を育み、世界と直結したオープンイノベーション拠点をめざす」とのことですが、区内企業と多様な人々とのオープンイノベーションとはどのようなことでしょうか?

藤内さん 例えば、ものづくり企業が培ってきた技術を活用して、スタートアップが新しい製品作りに挑戦する、もしくは新技術の開発を区内の匠の技術を有するものづくり企業がサポートするなどを想定しています。PiO PARKは、そういった様々な人や企業、技術が出会い、交流する場として設置しました。


にこやかに話す松居大樹さん(左)と、藤内悠輔さん(右)
――PiO PARKでは、どんなことができるのでしょう。

藤内さん 現在、コワーキングスペースとしての利用、イベントエリアの活用、ショーケーシングエリアの見学という3つの利用方法があります。人と人の出会いを創出するため、さまざまな方にお越しいただけるよう、明るくオープンな空間づくりを心掛けています。


コワーキングスペースは交流が生まれやすいフリーアドレス。オプションで個室も使用できます
――今までにどんなイベントが開催されましたか?

松居さん 当協会で現在実施している勉強会は、海外への市場開拓を考える企業が集まった「グローバルビジネス勉強会」、本日開催されている「ベンチャーフレンドリー塾」、それと「自社商品のつくりかた勉強会」です。そのほかにも、羽田空港近接の立地特性を活かした海外企業との交流イベントや医療関係者が国内から参加される研修での利用など、協会主催以外のイベントも行われています。

――「自社商品のつくりかた勉強会」について具体的に教えてください。

松居さん 大田区内には金属加工の企業が多く、それらの企業は “技術そのもの”が商品です。素晴らしい技術を持っていてもプロモーションすることが難しいと感じている企業の方々もいらっしゃいます。技術を目に見えるかたちでプロモーションし、自社オリジナル商品づくりに挑戦したいというマインドをもった企業などが集まって行う勉強会です。

藤内さん テーマを絞って大田区内企業の技術を紹介し、企業の商談機会を創出する「超専門技術ミニ展示会」というイベントも開催しています。

――これまでにも「穴あけ展」「やわらかたい展」「理想の仕上がり展」「曲げ展」などをユニークなテーマで実施されていますね。

松居さん どんな面白いテーマを企画しても、出展できる企業が集まらないと展示会はできません。かなりニッチなテーマでも出展企業が集まり、他に類を見ない展示会を開催できるのが大田区の強みだと感じています。

――法人登記すると住所が羽田空港になると聞きました。

松居さん 快適な通信環境が利用できるコワーキングスペースも、多くの方にご利用いただきたいです。審査はありますが、「羽田空港1丁目1番」の住所で法人登記をすることも可能です。


ショーケーシングに並ぶ展示品。時々入れ替えがあるそうです
――広い世界にまさに羽ばたいていけそうな、縁起の良い住所ですね! ショーケーシングは一般公開していますか?

松居さん はい。開館時間中(平日・土曜日の9時~19時)は、自由に見学できます。なかなか見られない大田区の技術を、ぜひ間近に感じてください。週末は親子連れの方もお越しになりますよ。

松居さん PiO PARKのオリジナルPRキャラクター「ぴおたん」のSNS(X、TikTok)などでの発信もぜひチェックしてください!


大田区非公認キャラのぴおたん。公式SNSをフォローすると、PiO PARKでオリジナルグッズ(右)がもらえます
――お二人がこれからのPiO PARKに期待されることをお聞かせください。

松居さん 羽田は日本のゲートウェイです。大田区のものづくり技術を、ここ羽田で国内外の皆さんに知っていただき、新しい領域に広がっていく、そんな未来を想像しています。

藤内さん PiO PARKに集まってくるのは「チャレンジをしたい」「技術を海外展開したい」という、未来を見ている方ばかりです。そのエネルギーがここから新たなイノベーションを生み出していくことを期待しています。


PiO PARKの広がりに熱意を燃やすお二人と「ぴおたん」

挑戦する人々を応援する「ベンチャーフレンドリー塾」

「ベンチャーフレンドリー塾」


ベンチャーフレンドリー塾の様子。みなさん真剣にお話に聞き入っています
取材当日、PiO PARKで「ベンチャーフレンドリー塾」が開催されていました。塾の主宰者でもあり、同塾会長の有限会社安久工機の田中宙さんと、副会長で株式会社極東精機製作所の鈴木亮介さんにもお話を伺いました。

――そもそも“ベンチャーフレンドリー”とはどういう概念ですか?

田中さん ベンチャー企業が「新しいものづくりにチャレンジしよう」と思っても、適切なパートナーに出会うのはとても難しいし、時間が掛かります。でも「相談に乗りますよ」「何かできることはないですか?」とベンチャーに対して“フレンドリー”な企業は必ずあります。まずは、そんなマインドを持つ企業を集めようと思いました。


安久工機の田中宙さん(左)と、極東精機の鈴木亮介さん(右)
――ベンチャーの挑戦に寄り添って応援するから“ベンチャーフレンドリー”なのですね。では、塾をつくった経緯は?

田中さん PiO PARKには「OSEKKAI Salon」という若手経営者の集まりがあります。そこで「ベンチャーフレンドリーなマインドの人を集めたい」という構想を話したところ、鈴木さんが乗ってくれたのです。

鈴木さん 当社では、ベンチャーの挑戦を以前から応援してきたので「仲間が増える、これはいいぞ」と。そんな話をしていた時に、超高速3Dプリンターの構想を携えた若者が「ベンチャーフレンドリーな企業があるって聞いたのですが……」と現れて。

――株式会社グーテンベルクの李社長ですね! 過去のユニークおおたでもご紹介しました!


開発当時の記念写真。最前列左端に鈴木さん、右端に田中さん。中央にある黒い機械がG-ZEROで、最後列左から2番目にいるのが李さん

――超高速3DプリンターG-ZEROは、まさにここから生まれたのですね。

鈴木さん 「いきなりすごいプロジェクトが飛び込んできた!」と(笑)。それで田中さんにさっそく相談して、一緒に開発を進めました。

田中さん この出来事もあって、もっとベンチャーフレンドリーな人を集めたら、日本のものづくりはさらに活性化すると確信しました。大田区産業振興協会に相談したところ「待ってました! PiO PARKをどうぞ活用してください」と場を提供いただけたので、私たちが中心になり塾形式で仲間を募って今に至ります。


塾終了後の懇親会の様子。まさに産業交流空間。あちらこちらで話が弾んでいました
鈴木さん ベンチャーフレンドリーの意味も説明していない段階で60社近くが集まりました。多くの企業が「今のままじゃいけない」という危機感があったのでしょう。その後も参加企業は増え続けています。

――塾ではどんな勉強会を開催していますか?

鈴木さん 実体験をシェアしたり、ワークショップをしたり。PiO PARKにたくさんの人が流入して、それぞれのもつ技術やノウハウや経験が有機的・流動的につながっていき、新しい価値がここから生まれていきます。

田中さん イノベーションが起きるセオリーって、おそらくないと思うんです。じゃあどうしたらいいのかと考えると、とにかく誰かと出会って、自分はこういう人だとさらけ出して、お互いぶつかりあってみるしかない。

――その出会いを生むのにPiO PARKは最適ですね。話は変わりますが、安久工機といえば、数年前に人工心臓を研究する小学生「BENくん」で話題になりましたよね。最近は、人工心臓の開発にまつわる大泉洋さん主演の映画「ディア・ファミリー」の制作に協力されたとか?

※BENくんは、2021年の夏、北陸から「人工心臓に興味がある」と安久工機の工場見学にやってきた小学生(当時)。小学生とは思えない専門知識の高さや、熱心さに田中さんも驚き、見学申込みのやりとりから後日談などをSNSで発信したところ、15万超えの“いいね”を集める大反響となりました。心臓の弁を由来とするBENくんのニックネームは田中さんが命名しました。

田中さん はい、協力しました。BENくんのおかげで、映画制作のご担当者の記憶に残ったのかもしれません。 今、当社では中学生になったBENくんの心臓弁開発研究のスポンサーをしています。……今後、ベンチャーフレンドリー塾で、子どものものづくりをサポートするという取組みもできないかなと思っていて。

鈴木さん 今、初めて伺った構想ですが、すごくいいアイデアですね! 今、子どもの突出した才能が出にくい環境だなと思うので、もしここでアントレプレナーシップ(起業家精神)を学んでもらえたら、また新しいイノベーションが生まれるかもしれない!

――まさに、PiO PARKで新しいイノベーションが生まれそうな瞬間に、立ち会うことができました。これからどんな発展を見せるのか、期待しています。最後に、大田区の魅力や未来についてお聞かせください。

鈴木さん ものづくりに対する行政の支援が、すごくしっかりしています。ほかの地域の町工場の方から、いつもうらやましがられます。地元企業として感謝していますし、とても誇らしいです。

田中さん 公的な支援もあり、つながりを大事にする仲間もいる。そんな大田区は「ものづくり天国」になれるはずです。「ものづくりを志すなら、まず大田区に行こう」って思ってもらい、いろいろな才能がここに集まってきてほしいです。

鈴木さん 大田区で仕事をしていると「日本はまた、ものづくり大国として次のフェーズへ生まれ変わることができる」と信じられます。

田中さん そうですよね。もし失敗しても、大笑いして「次に行こう!」っていう土壌があるのが大田区のものづくり。ここから元気のいいスタートアップがどんどん生まれ、大田区から日本が活性化し、そして新しい「ものづくりジャパン」になる。そんな未来を想像しています。


パワーとスピードの鈴木さんと、熟考型の田中さん。お互い「自分とは違う役割を担う」と認め合うパートナーシップです
PiO PARK(ピオパーク)
https://PiOPARK.net/
住所
東京都大田区羽田空港1丁目1番4号 HICity zone K
電話
03-5579-7971

HANEDA×PiO
https://haneda-pio.com/


さらに、大田区のものづくりに触れたい方は……
おおたオープンファクトリー!! 2024年は11月30日(土)開催です。
https://www.o-2.jp/news/oof2024-entry/

創造力に溢れたものづくりについては
https://unique-ota.city.ota.tokyo.jp/charm/industry/pickup-202004-01/
産業のまち発見隊レポートは
https://unique-ota.city.ota.tokyo.jp/news/sangyounomachihakkentai_202308/

PiO PARK特集はいかがでしたか? 新しいものづくりのエネルギーにあふれた場所です。機会があればぜひ訪れてみてください。

大田区内にはまだまだ注目のスポットがたくさんあります。あなただけの「おおた推し」スポットを見つけてみてください!見つけたスポットは、ぜひSNSへ投稿を。その際は#uniqueotaをつけてくださいね!

大田区シティプロモーションサイトUniqueOtaでは、「他にはない、大田区ならではのユニークな場所と出会えるまち」を合言葉に、区内のさまざまな魅力を発信中です。

ぜひ、あなたの興味あるコンテンツを探してみてください。次回の特集もお楽しみに!
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