ベンチャーフレンドリー塾の様子。みなさん真剣にお話に聞き入っています
取材当日、PiO PARKで「ベンチャーフレンドリー塾」が開催されていました。塾の主宰者でもあり、同塾会長の有限会社安久工機の田中宙さんと、副会長で株式会社極東精機製作所の鈴木亮介さんにもお話を伺いました。
――そもそも“ベンチャーフレンドリー”とはどういう概念ですか?
田中さん ベンチャー企業が「新しいものづくりにチャレンジしよう」と思っても、適切なパートナーに出会うのはとても難しいし、時間が掛かります。でも「相談に乗りますよ」「何かできることはないですか?」とベンチャーに対して“フレンドリー”な企業は必ずあります。まずは、そんなマインドを持つ企業を集めようと思いました。
安久工機の田中宙さん(左)と、極東精機の鈴木亮介さん(右)
――ベンチャーの挑戦に寄り添って応援するから“ベンチャーフレンドリー”なのですね。では、塾をつくった経緯は?
田中さん PiO PARKには「OSEKKAI Salon」という若手経営者の集まりがあります。そこで「ベンチャーフレンドリーなマインドの人を集めたい」という構想を話したところ、鈴木さんが乗ってくれたのです。
鈴木さん 当社では、ベンチャーの挑戦を以前から応援してきたので「仲間が増える、これはいいぞ」と。そんな話をしていた時に、超高速3Dプリンターの構想を携えた若者が「ベンチャーフレンドリーな企業があるって聞いたのですが……」と現れて。
――株式会社グーテンベルクの李社長ですね! 過去のユニークおおたでもご紹介しました!
開発当時の記念写真。最前列左端に鈴木さん、右端に田中さん。中央にある黒い機械がG-ZEROで、最後列左から2番目にいるのが李さん
――超高速3DプリンターG-ZEROは、まさにここから生まれたのですね。
鈴木さん 「いきなりすごいプロジェクトが飛び込んできた!」と(笑)。それで田中さんにさっそく相談して、一緒に開発を進めました。
田中さん この出来事もあって、もっとベンチャーフレンドリーな人を集めたら、日本のものづくりはさらに活性化すると確信しました。大田区産業振興協会に相談したところ「待ってました! PiO PARKをどうぞ活用してください」と場を提供いただけたので、私たちが中心になり塾形式で仲間を募って今に至ります。
塾終了後の懇親会の様子。まさに産業交流空間。あちらこちらで話が弾んでいました
鈴木さん ベンチャーフレンドリーの意味も説明していない段階で60社近くが集まりました。多くの企業が「今のままじゃいけない」という危機感があったのでしょう。その後も参加企業は増え続けています。
――塾ではどんな勉強会を開催していますか?
鈴木さん 実体験をシェアしたり、ワークショップをしたり。PiO PARKにたくさんの人が流入して、それぞれのもつ技術やノウハウや経験が有機的・流動的につながっていき、新しい価値がここから生まれていきます。
田中さん イノベーションが起きるセオリーって、おそらくないと思うんです。じゃあどうしたらいいのかと考えると、とにかく誰かと出会って、自分はこういう人だとさらけ出して、お互いぶつかりあってみるしかない。
――その出会いを生むのにPiO PARKは最適ですね。話は変わりますが、安久工機といえば、数年前に人工心臓を研究する小学生「BENくん」※で話題になりましたよね。最近は、人工心臓の開発にまつわる大泉洋さん主演の映画「ディア・ファミリー」の制作に協力されたとか?
※BENくんは、2021年の夏、北陸から「人工心臓に興味がある」と安久工機の工場見学にやってきた小学生(当時)。小学生とは思えない専門知識の高さや、熱心さに田中さんも驚き、見学申込みのやりとりから後日談などをSNSで発信したところ、15万超えの“いいね”を集める大反響となりました。心臓の弁を由来とするBENくんのニックネームは田中さんが命名しました。
田中さん はい、協力しました。BENくんのおかげで、映画制作のご担当者の記憶に残ったのかもしれません。 今、当社では中学生になったBENくんの心臓弁開発研究のスポンサーをしています。……今後、ベンチャーフレンドリー塾で、子どものものづくりをサポートするという取組みもできないかなと思っていて。
鈴木さん 今、初めて伺った構想ですが、すごくいいアイデアですね! 今、子どもの突出した才能が出にくい環境だなと思うので、もしここでアントレプレナーシップ(起業家精神)を学んでもらえたら、また新しいイノベーションが生まれるかもしれない!
――まさに、PiO PARKで新しいイノベーションが生まれそうな瞬間に、立ち会うことができました。これからどんな発展を見せるのか、期待しています。最後に、大田区の魅力や未来についてお聞かせください。
鈴木さん ものづくりに対する行政の支援が、すごくしっかりしています。ほかの地域の町工場の方から、いつもうらやましがられます。地元企業として感謝していますし、とても誇らしいです。
田中さん 公的な支援もあり、つながりを大事にする仲間もいる。そんな大田区は「ものづくり天国」になれるはずです。「ものづくりを志すなら、まず大田区に行こう」って思ってもらい、いろいろな才能がここに集まってきてほしいです。
鈴木さん 大田区で仕事をしていると「日本はまた、ものづくり大国として次のフェーズへ生まれ変わることができる」と信じられます。
田中さん そうですよね。もし失敗しても、大笑いして「次に行こう!」っていう土壌があるのが大田区のものづくり。ここから元気のいいスタートアップがどんどん生まれ、大田区から日本が活性化し、そして新しい「ものづくりジャパン」になる。そんな未来を想像しています。
パワーとスピードの鈴木さんと、熟考型の田中さん。お互い「自分とは違う役割を担う」と認め合うパートナーシップです
PiO PARK特集はいかがでしたか? 新しいものづくりのエネルギーにあふれた場所です。機会があればぜひ訪れてみてください。
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